2013年11月アーカイブ

害虫抵抗性作物やその花粉で受粉した近縁野生種を餌として摂食するのは害虫だけではありません。

Bt毒素を組み込んだトウモロコシの花粉をふりかけたトウワタの葉を餌としてオオカバマダラ(帝王蝶)の幼虫を4日間飼育したところ生存率が56%だったというロージーら(1999)の報告は、Bt毒素が害虫だけを殺すものでないことを示しています。

10年後、20年後の生態系のバランスを崩してしまってよいのでしょうか。

遺伝子組換え作物の栽培にともなう最大の問題点は、将来何らかの理由で自然界に広がってしまった組換え遺伝子を回収しなければならない事態が生じたとしても、私たちにはこれを見分けるすべがないということです。

遺伝子組換え作物に組み込まれた遺伝子やその産物であるタンパク質は自然界に放出され、他の生物や生態系にさまざまな影響を及ぼします。

花粉の形で放出された外来遺伝子は、周囲に同種の作物や近縁野生種があれば授粉し、組換え遺伝子が次の世代に固定されます。

また組換え作物が結実すれば、種子の形で組み換えた遺伝子が拡散します。

なぜこれらが問題なのでしょうか。

たとえば害虫抵抗性遺伝子(Bt遺伝子)が導入された植物は体内のいたるところでBt毒素を生産しており、これを摂食した昆虫は毒素のために死にます。

どうしても遺伝子組換え食品を食べたくない場合には、「不分別」の表示を「組換え作物を含む可能性あり」と読みかえて、避けることができます。

そういう意味では「不分別」表示が採用されたことは評価してよいでしょう。

ただし分別して流通管理していても意図せずに混入してしまった場合には5%の混入までは許容されます。

したがって組換え食品ではないと思って食べていても5%までは混入している可能性もあるということです。

生産、流通管理が一般の農産物とは区別して行われた遺伝子組換え作物を原材料として使用した場合には「大豆(遺伝子組換え)」などの表示が義務づけられます。

また生産、流通管理が一般の農産物と区別されなかった場合、すなわち組換え作物と非組換え作物が混ざっている場合には「大豆(遺伝子組換え不分別)」などの表示が義務づけられます。

非組換え作物を分別して生産、流通管理して利用した場合には「大豆(遺伝子組換えでない)」などの表示を任意で行うことができます。

逆に遺伝子組換え作物を原料に使っていても加工したのちの製品からDNAやタンパク質が検出できない場合には表示の義務を免れます。

しかしどのような食品でも、原材料にさかのぼって分析すれば、遺伝子組換え農産物が使われているか否か、あるいは混入しているか否かは容易にわかることです。

将来的には原材料の段階でのチェックが義務づけられるべきでしょう。

表示が義務づけられる品目ですが原材料の流通管理方法により表示内容が異なります。

2001年4月から農林水産省は遺伝子組換え食品の表示を義務づけました。

96年に輸入が始まった当初は、安全性が確認されたものにあらためて表示をする必要はないと強気だった農林水産省や旧厚生省でしたが、消費者運動の高まりのなかで方向転換をしたよい例でしょう。


表示の読み方
それではどのような表示がされているのでしょうか。

遺伝子組換え作物やその加工食品のうち、加工したのちも組換えで導入したDNAやその産物であるタンパク質が検出できるものについて表示が義務づけられます。

化学合成農薬を使ったために健康を損ね、農薬の怖さを体験した農家の中から、化学合成農薬や化学肥料をまったく使わずに有機農業を始める人が出てきました。

こうした有機農業実践農家の大部分は小規模な家族経営のため、病虫害を分散し価格暴落のリスクを回避するため、多品目の作物を少しずつ栽培しています。

有機農業は「農業基本法」が目指した、大規模経営や特定の品目に集中して効率化をはかる専作経営とはなじまないのです。

つまり有機農業は今の農政のなかではきちんとした位置づけができていません。

有機農業を日本全体に広げるためには、農業基本法が進めてきた近代農業の功罪を厳しく評価するとともに、有機農業を日本農業の将来像のなかにしっかり位置づけ、それにふさわしい農業政策を打ち立てることが大切です。

有機農業とは「化学合成農薬や化学肥料を一切使わない農業」の意味でした。

近年とくに安全で安心な「有機農産物」への関心が高まっていますが、そのわりには有機農業への理解は不十分です。

有機農業の対極にあるのは、化学合成農薬や化学肥料に依存する「近代農業」です。

化学合成農薬や化学肥料は農家にとって、作物の収穫量を安定的に増やし労働量を大幅に軽減するのに大きな効果がありましたが、近年になってそれらの害が論じられるようになりました。

害とは、食品への農薬残留、農家の健康障害、環境汚染、自然生態系が乱されることです。

第三に、すでにダイオキシンで汚染された場合の対策が不備です。

汚染された土壌、河川の底土やゴミ焼却場から出る灰の最終処分などの施策がありません。

ドイツでは、子供の遊び場の土壌が100pgを超えれば、入れ替えを行うことが決められています。

日本では土壌入れ替えを定めていません。

第四に、ダイオキシンに汚染された食品の摂取を規制する基準がないことです。

これら環境汚染は、回りまわって食べ物を汚染し、われわれの体をむしばむことになります。

この循環を断たない限り、食べ物へのダイオキシン汚染の本格的な減少は期待できません。

ダイオキシン対策を法的に定めたダイオキシン類対策特別措置法が施行されたのは、2000年になってからです。

特別措置法には、ダイオキシンの発生と環境汚染を防止するうえで、多くの問題があります。

第一に、発生源を断とうとする施策がありません。

燃やせばダイオキシンが発生するもととなる、塩化ビニルなど有機塩素系の化学物質を燃やさない、あるいはそうした材料の使用を制限する基本的な方策がありません。

第二に、環境基準が不十分なことです。

環境の改善には、排出ガス、排水、焼却灰などの中に含まれるダイオキシンを減らす必要がありますが、これらの排出基準が厳しくありません。