2014年12月アーカイブ

ガットの紛争処理手続を最も活発に利用してきたのは,米国とECである。

 まず最初に米国について注目すべき点は,一方的制裁措置やガット無視の行動によって「ガット離れ」を進めているといわれる米国が,実はこれまで最もひんぽんにガットの紛争処理手続を活用してきた事実である。

1948年から89年までの間にあった総計約140件の紛争案件のうち,約3割の45件は米国の提訴によるものである。

1980年代から90年代初めにかけてガット提訴件数は急増しているが,この時代だけをとってみても,提訴数の一番多いのは米国である(80年代の米国の提訴数は23件,2位のECは21件,続いてカナダの20件)。

米国のガット提訴の多さは,1つには,ガットを戦略的に使うという米政府の政策判断を反映している。

上記の文言を交渉上の目的として設定した上で,交渉の手順が1987年1月28日に他のすべての交渉グループとともに決定された。

まずガットの紛争処理プロセスの機能について参加各国が分析し問題点を交渉グループに提出する。

これを審議するなかで交渉が適切と思われる問題点を明らかにし,次に交渉の対象として適切と判断された問題点について参加国は具体的な提案を提出することとなった。

こうして提出された提案をべ一スに実質的な交渉に入っていったのである。

2 「中間レビュー」(Mid-term Review)
交渉開始期における議論では,ガットの紛争処理メカニズムは迅速化を要するものの比較的うまく機能しており,急激な改革は必要ではないという点で一71マv干月yJ:「肥枕倣同駈vノ」出I!魯曾ノ応の合意が存在した。


1 プンタ・デル・エステ宣言
紛争処理の問題が新ラウンドの交渉項目になることはすでに準備委員会における議論のなかで明確になりつつあったが,正式に交渉項目として認知されたのは,1986年9月15日から20日にかけて開催されたガット締約国団特別総会において採択された閣僚宣言の第1部によってである。

同宣言は紛争処理について以下のように規定した。

「すべての締約国の利益になるように紛争の迅速,実効的な解決を確保するために,交渉は紛争処理プロセスのルールと手続きを改善,強化することをめざすべきである。

その際,より実効的で履行可能なガットのルールや規律が果たすことであろう貢献も認める。

本件交渉は採択された勧告を遵守しやすくするような手続きを監督,監視するための適切な方策についてその可能性を模索することも含むものとする。」

関税化の目的は,不法不合理な保護手段を合法的合理的な保護手段に変えて,ガットの原則を守るとともに制度改善に役立てることです。

ちなみに,国際収支の赤字対策としては,マクロの経済政策の改善,とくに財政赤字の削減が最も重要であることがガットでも認識されています。

為替レート,公定歩合および経済・社会の構造改革も関係が深いでしょう。

ガット交渉で行なわれる個々の産業または産品の市場開放,すなわちミクロの対策は,その範囲にもよりますが,効果が限られています。

しかし,その積み重ねが一歩一歩貿易自由化を進め世界経済を活性化してきたのです。

ガット第12条は,国際収支の赤字に悩む国が輸入全般に課徴金または数量制限を一時的に課すことを認めています。

農業の将来に不安をもっている農家が多いと思います。

コメ制度の改革を受け入れるためには,農家の人たちを安心させることが大事なのではありませんか。

そのとおりです。

農家の理解を求めるために,関税化にともなう転換をスムースにする対策を政府が早く発表すべきです。

しかし,関税化そのものに対して農業団体と政治家が今のように反対していては,それがやりにくいでしょう。

農業団体と政治家が世界に目を開き,農業の将来と国家・世界の大計のために力を貸していただきたいと思います。

関税化は日本の黒字対策にはならないのではありませんか。

コメの関税化は,日本の大きな経常収支黒字の解決にはわずかしか貢献しないでしょう。

(3)コメ問題は,米国で業界の提訴があったときに,rURで解決する」ことを日本が米国に提案し,米国がそれを了承した経緯がある。

国際信義のためとガット体制をこわさないために,この問題はガット交渉で解決しなければならない。

(4)コメ問題の解決なくして農業交渉は妥結しない。

また,農業交渉を置き去りにしてURを終結させることはできない。

交渉開始時に「包括的妥結」
が合意されているからである。

(5)農産物の輸出に依存している国は途上国にも多く,コメをガット規律の例外と認めては,ガット体制が世界の信用を失い崩壊の危険にさらされる。

農業あるいはコメだけをガット体制の外に置いておくという主張は,国際的に受け入れられる可能性はない。

(6)日本はガット違反の「国内完全自給」,すなわち輸入禁止を継続することはできない,これを主張しつづけては,国際秩序を乱す者,UR交渉を推進するどころか,妨害した犯人として扱われることになる。

(7)日本は2国間交渉よりはガットの多国間体制を重視していかなけれぽならない。

多角的交渉は健全で安定し,無差別で衡平な世界経済秩序を構築することに貢献している。

さて,コメ問題については,ガットの無理解からくる誤解が多い。

まず,本問題に対する日本の対応についての武田邦太郎氏の意見を紹介し,次にダンケル案の概要を示し,最後にダソケル案についての誤解を解くために質疑応答形式で解説した。

コメ問題は,URで解決しなければならない。

米国との2国間交渉で解決を図った方がよいとする意見は誤りである。

その理由は次のとおりである。

(1)ダンケル関税化案は,農業交渉を決着させてUR交渉を終結させるために特殊状況のもとで出されたきわめて寛大な妥協案である。

日本がコメ問題を解決するこの千遇の好機を逃すべきではない。

(2)日本はこれまで交渉で選択肢があるときに,最後までがんぼれと反対しつづけ,いよいよがんばり切れなくなったときに,ろくろく交渉をしないまま,他国に責任を転嫁して大譲歩をすることがあった。

このようなまずい交渉を今回も行なうべきではない。

ダンケル案については交渉すべきことが多く,時間がかかる。