2014年6月アーカイブ

サービスの自由化が日本人の生活の内容の向上につながることを期待したい。

家計費調査によると。

1963年には家計費の70%が物品購入に支出され、30%がサービスの購入に支出された。

その後、サービス購入の比率が年々増加し続け、1983年には43%に達した。

日本人の生活も余裕ができてサービスに支出する割合が増えてきているが、問題はその内容である。

日本と欧米との間を往復して感じるのは、日本ではサービスの質は欧米よりよいことが多いが、その価格が高くて支出高の割合に内容が乏しいことである。

土地の価格が高いという悪条件もあるが、国際競争がなんらかの形で不必要に制限されている場合もあると思われる。

たとえぽ、官庁が競争を制限することを正当化する理由に、「消費者のための安定供給」という題目がある。

当初はその必要があったかもしれないが、時代の変遷を経てその必要が薄れ、その名分のもとに過剰な規制や保護が残り、実際には関係業界のカルテル化、利潤の安定化の役割を果たしている場合が多いようである。

自由と秩序は両者とも望ましいものであるが、一方を大きくするためには他方を多少犠牲にする危険を冒すことがある。

問題はこの相克する概念を時代の要求に合ったようにどのようにミックスするかである。

文化の違いで最良と考える混合比が違うこともあり得よう。

自由な能力開発を奨励するアメリカ社会と、枠のなかでの平等指向が強い日本社会の差が出てくるかもしれない。

また、秩序を第1とした幕府政治を文化の基盤とする日本と、自由な開拓者魂を活力源とするアメリカではかなり焦点の置き所が違い得る。

かつてニューヨークを訪れて驚いた。

ポソコッ屋から引き出したような汚ないタクシーが多い。

聞くと規制を緩和して新規参入を大きく許したためだということであった。

弊害もみえてきたので、また少し前に戻し規制するとのことであった。

多少荒っぽく何でもやってみようというアメリカと、安定指向で外圧でもなけれぽなかなか変化できない日本との間に文化の違いをみた感じがした。

ガット体制が弱体化すると、事実上の差別待遇が横行する危険性がある。

㈲農業団体が既得権維持のために農業活性化対策に反対してきた。

コメ関税化反対もその一環である。

関税化を契機として大規模化、法人化などの農業活性化対策を推進しなけれぽ、日本農業は若者に見放され、将来性を失おう。

ガット規定上輸入禁止は、麻薬、狽褻物、武器、有害食品のようなものにしか認められていない。

日本がコメの完全自給(=輸入禁止)に固執し、ガット違反行為を強引に世界に認めさせようとすると、日本の国際ルール無視と国際非協力の姿勢が世界の非難の的になる恐れがある。

また、日本の国際交渉上の立場が弱まり、世界から疎外されていくであろう。

世界経済とくに途上国経済の秩序ある発展のためには、ガット体制が不可欠であることはいうまでもない。

国際ルールが尊重されない世界では経済摩擦がふえ、その解決が困難を増そう。

ガットは地域統合の排他性を抑制する機能をもっている。

作業部会および貿易政策審査機構による地域統合の審査、紛争処理手続の活用およびグローバルな自由化交渉を通じてそれが行なわれてきた。

UR交渉が失敗すれば、地域統合の行き過ぎの抑制ができず、とくにサービスなどの新分野において排他的制度が導入される危険が大きくなる。

第2次世界大戦後、自由で無差別な貿易待遇を推進するガット体制が構築された。

戦前の日本は輸出品のボイコットや差別待遇に苦しんだが、無差別自由な貿易待遇を推進するガット体制が戦敗国日本にも適用されたために、戦後の経済発展を遂げることができた。

また、市場経済の内容を改善させる。

もし、いたずらに交渉の妥結が遷延されると、現在ある世界経済秩序を維持することがきわめて困難になっていくであろう。

それは次のような問題を発生させよう。

(i)長年の交渉の成果が結実しない失望と不満が国際関係を苦いものにし、報復的措置を助長しよう。

(ii)世界経済の先行きの見通しが悪化し、貿易と投資が停滞または減少し、世界経済の沈滞を長期化させるであろう。

GiDガットの多角的貿易体制への信用が傷つき、体制が弱体化しよう。

その結果、国際ルールが軽視され、2国間交渉で問題解決が図られるようになるであろう。

それでは弱小国のみならず国際交渉力が弱い国が困ることになる。


(a)サービス貿易に関する一般協定(労働力移動、金融等に関する付則を含む)が作成され、第3次産業に関する国際ルールが初めてできた。

(b)サービス貿易の開放度に関する最初の約束(initialcommitments)が交渉された。

ウルグアイ・ラウンド交渉妥結の利点と妥結遷延がもたらす問題点

UR交渉が妥結すれぽ、多角的貿易体制が強化されることは間違いない。

それは次のような結果をもたらすであろう。

(1)アジア諸国や途上国にとって、公平で無差別な待遇を確保しやすい。

(2)世界経済の将来展望を明るくし、不況の長期化からの脱出を助ける。

(3)地域統合の排他性および一方的な貿易制裁措置が抑制しやすくなる。

(4)世界経済、とくに新分野に国際ルールに基づいた秩序を与える。

(5)国際経済問題を今後も多角的貿易体制の場で公平に交渉しようとする傾向を醸成する。

(6)国際経済紛争の処理を助ける。

(7)市場経済の推進によって、硬直化した産業部門の合理化を助け、世界経済の活性化を助ける。

このような状況のなかで、最も経済の活力を残しているアジア諸国がウルグアイ・ラウンド交渉の妥結を強力に推進する役割を背負っている。

とくに、ガット体制の恩恵で経済大国となった日本の責任は重い。

交渉妥結の遅れはどのような問題をアジア諸国にもたらすであろうか。

(1)ECおよびNAFTAの地域統合のための制度づくりが先行し、事実上の対外差別待遇とその基礎が増え、既成事実として定着することが懸念される。

そして新制度の域外適用について相互主義的要求が強化されるであろう。

(2)ガット体制に対する信頼が薄れ、その効果が弱められる恐れがある。

たとえば、輸出自主規制およびローカル・コンテント要求を禁止し、一定期間内に既存のものを撤廃させることが交渉結果として合意される予定である。

しかし、交渉がもたついては最終合意がどうなるかわからない。

また、地域統合の行過ぎを抑制するガットの機能が弱体化する恐れもある。

韓国やシンガポールなども発展段階を向上させており、日本との経済格差を縮めている。

将来は事情が変化して、西太平洋アジア地域内の経済統合が現実味を増していく可能性がある。

まず中国と台湾のガット加入を成功させ、国際経済社会に受け入れることが重要であろう。

究極的には、アジア諸国が相互の不可避的な経済依存関係を認識して、友好関係を不動のものにし、運命共同体的関係を徐々に構築していくことがアジアに経済統合の気運を醸成することになろう。

ECは1990年に終結が予定されていたウルグアイ・ラウンドの成果に基づいて、1992年末までに単一市場を完成させる予定であった。

しかし、交渉の妥結が大幅に遅れ、その間共産主義体制が崩壊した。

ドイツは旧東ドイツの経済立直しを最優先課題としている。

多くのヨーロッパ諸国は、東欧および旧ソ連の経済問題を主にヨーロッパの問題として重要視している。

世界の多くの国は経済の沈滞に苦しんでいる。

日本、韓国および台湾は深い経済相互依存関係にあるが、経済外の理由もあって差別待遇が残っており、最恵国待遇も完全ではない状況にある。

日本はどの経済統合にも属していない唯一の先進国である。

海洋国家であるためと、近い発展段階にある国が近隣になかったためである。

日本を含めたアジア諸国は、現状では最恵国待遇を柱とするガット体制を最優先的に取り扱うべきことに疑いはないであろう。

しかし、アジア諸国の発展はめざましく、相互の経済依存関係が産業内貿易により緊密化しつつある。

アジア諸国間の航空貨物輸送が発達して価格が低下すると、陸接していない地理的条件の不備を補っていくであろう。

台湾は先進地域としてガットに加入しようとしている。


アジア諸国(とくに西太平洋アジア・大洋州諸国)は、このように経済統合の悪影響に懸念があるかぎり、それが現実化することを避けるためにも、対抗上なんらかの地域的協力行動をとれる枠組みをもつことが望ましい。

APECあるいはマハティール案のようなアジア中心の地域協力体制がその役割を果たすことが期待される。

アジア諸国の多くは陸接していない海洋国家であって、基礎的に経済統合に向いていない場合が多い。

ほかにも次のような経済統合に向いていない理由がある。

(1)歴史的文化的背景が多様であって、運命共同体としての意識をもちにくい。

(2)高成長を続けている国が多い。

(3)貿易の過度の対日依存を避けたい国がある。