合成法のコストダウンによって、製剤開発が順調に進み始めた

合成法のコストダウンによって、8%粒剤で商品化することが可能になった。

穂いもち病の予防に抜群の効果をもつ、この化合物が製剤開発に結びついたことを喜んでいたわけだ。

慢性毒性などの試験と並行して、本社サイドも企業化準備に入った。

実際に製剤を販売する製剤メーカーとの共同研究も開始された。

慢性毒性試験の中間検査(実施期間104週の52週目)のデータでは全く異常がみられず、社内の期待はいよいよ高まる。

第一農薬事業部開発部長さんは、他の事業部幹部と一緒に、売り上げ計画の作成に入っていた。

まだ申請手続きすら取っていないとはいえ、工場で新たな設備を作ったり、生産に備えるのだから、社内で市場性の予測や、ある程度の見込みをつけることは当然だ。

業界関係者の集まりなどで、ウワサを聞いた他社の人から「いい剤が出るらしいね」などと言われて、「まだわかりませんよ」と笑いながら心の中ではソロバンをはじいていたのである。